【第三章、第四章のあらすじ】
女装用品の処分、様々な想い出のある品を箱詰めしながら、それを身につけた日のことを思い出していた。車で女装を絶つための修行場、ある「道場」に着いた、そこでは精神修養だけでなく、奉仕活動もあった。
女装用品の処分、様々な想い出のある品を箱詰めしながら、それを身につけた日のことを思い出していた。車で女装を絶つための修行場、ある「道場」に着いた、そこでは精神修養だけでなく、奉仕活動もあった。
車から降りるとリアドアを跳ね上げて、ホームセンターで購入した、大きなダンボール箱を18個取り出した。はじめの箱には、パンプスやブーツ、サンダルを入れることにした。なかなか収まりきらず、靴だけで4箱になった。
次に4箱は下着類を入れるために、5箱は女装用の衣類
用。バッグだけでも2箱、残りの3箱には、化粧品、小物、ウイッグなどを入れるために順番に箱を組み立てて、粘着テープで底を貼り、中身の種類別に色分けされた15センチ四方のラベルを貼り、「下着、ランジェリー」「パンプス、ブーツ」「ウイッグ、小物」などとサインペンで記入した。
リビングも、18個もの箱を並べると狭く感じた。ベランダの戸を開けるとレースのカーテンがふわりと舞い、涼しい風が吹きぬけた。
「さあ、どれからはじめようかしら」
自分でも気づかぬうちに、女言葉になってしまっていた。すべての女装用品を明後日に、修業道場の本部に納めることになっている。
自分で処分するといって、処分できずこっそり隠してしまうことを防ぐ意味もあると言う。きっぱりと女装に別れを告げるためには思い切りも必要かもしれないなと思った。
ウォークインクロゼットから、すべての靴箱を取り出した。それと玄関のシューズボックスからもパンプスやサンダルを取り出した。まずかさばりそうなブーツを紙製の靴箱のままダンボールに入れた。ロングが3足、ショートブーツが2足、次の段ボール箱にはまだ余裕があるので近くにあった白い靴箱を寄せてふたを開けた。中には、女性用の白いサンダルが入っていた。
女装用として初めて買った白いサンダル。

それまで室内だけの女装だった。いつかは女装して外を歩いてみたい、そんな気持ちで買ったサンダルを履いて外出したときのことを思い出していた。
その機会は思っていたよりも早くやってきた。週末の夜の楽しみで、いつもどおりブラジャー、ショーツを身につけて少しミニ丈のワンピースを着て、メイクも終わりウイッグを頭の位置にあわせて留めると、そこには「涼子」がいた。僕の部屋に涼子が来た。
今、彼氏の部屋で「涼子」という女の子になって、彼につくす彼女を演じていた。
「ベランダに出て、お洗濯物を干さなくちゃ」
「あれっ、途中で止まったままだわ、故障かしら」
お風呂上りに、洗濯物を入れて洗剤を投入したはずなのに、機械の故障か洗濯機が動かなくなってしまった。
「困ったわね、・・・」
「そうだわ、近くのコインランドリーを使えばいいんだわ」
大胆にも、女装のままでコインランドリーに行ってみようとしたのです。もうすでに10時過ぎ、ほとんど人通りもなくて今なら大丈夫と思いました。カーディガンをはおり、手提バッグの中に、ビニールの袋に入った洗濯物を入れました。
静かにドアを開け、エレベーターに乗り1階に下りました。オートロックのドアが開き、外に出ました。胸がどきどきして、1分ぐらいの時間なのにずっと長く感じました。そこから400メートルほどの道のりも、ずいぶん遠く感じるのです、途中で自転車に乗ったサラリーマン風の人とすれ違いました。
相手は何も気づかずに通り過ぎていきました。そこから50メートルほど歩いたところで、ゴミ出しをしているおばあさんがいました。声を交わすこともなく、すれ違っただけでした。コインランドリーに着いた時にはほっとしました。
深夜のコインランドリーには、誰も来ないままで洗濯は終わりました。自動販売機があったので、サイダーを少し飲みました。
「24センチね、サイズが少し小さいみたいね」
椅子に掛けて、足元のサンダルを見ながらつぶやくのでした。
「涼子、今度買う時はサイズをちゃんと確かめて買おうね」
「この前は、余裕がなかったからね」
男性用の靴だと25の僕には、女性用だと24.5㎝が一番ぴったりだったのです。
帰りには、少し余裕が出てきて洗濯物の入った手提げを腕にかけて、手鏡で髪の毛を少し櫛で梳かしてからコインランドリーを出ました。

深夜の女装は、さわやかな風も心地よく、無事に終わりかけていました。その時、そっと近づいてきた自動車から声をかけられました。車が止まり、助手席からもう一人の男が降りてきました。
「ねえ、遊ぼうよ」
「カラオケでも行こうよ、何もしないから」
「1時間だけでもいいから」
「無視はひどいよ、黙っていると、OKと思っていいね」
怖くて、少し小走りで近くのおうちの門の中に入りました。門の鍵をかけ、そのお家の玄関の前まで行くと、あきらめたのか男たちが車で走り去っていきました。あたりが静かになるのを待って、門を開けてマンションまで帰りました。胸がどきどきしていたことを思い出していました。
そのことがあってから、逆に「女の子に見えるんだ」という自信がつき、女装外出の回数が増えていきました。
「さあ、次はこの箱を入れてしまおうかしら」
手に取ったのはゴールドメタリックで、12センチのヒールのある靴でした。
その靴は、プレイ用に靴店でお相手の方が買ってくれたものでした。
「涼子、今夜はプレゼントしたいものがあるんだ」
「さっきのハイヒールなの?」
「それとは違うんだ」
彼が取り出したのは、ショーツというよりも、バタフライといってもいいぐらいのものでした。派手なピンク色で、わずかにアソコを隠す程度のもの。
「早く、穿いて見せて欲しい」
「えっ、これを穿くの、恥ずかしい」
「穿きたいんだろう、恥ずかしいなんて言っても」
「えっ、これを穿くの、恥ずかしい」
「穿きたいんだろう、恥ずかしいなんて言っても」

前のピンクの部分はシルクで直径が10数センチほどのハート形、そのハート型の周りにはレースの飾りがあってウェストやバックは、ほとんど紐のようになっていました。両サイドから、中に手を入れて触ることができるのです。
「こんなエッチな下着は、涼子には、似合っているよ」
「これじゃ、はみ出しそうだわ」
「可愛いよ、見えても、いいじゃないか」
「はじめから、見えるのは、嫌よ」
「タックをしてから、穿いてごらん」
タックというのは、男性器を体内に納めるように見えなくしてしまうことなんです。ベビードールを着て、ベッドに横になると彼の愛撫が始まりました。
いつもは下半身のものをすぐに触るのに、その夜は乳首周辺をざらざらした舌で嘗め回し、乳首を指でつまみ、手のひらで乳房をつかむように揉みしだクのです。
ゴールドの12センチのハイヒールを履いた涼子の足は、微妙な刺激で屈伸を繰り返し、ある時はつま先を伸ばしきって、ある時は膝を曲げて快感の波にあわせるように妖しくうごめくのでした。

「ああー、もう感じすぎるの」
「そうかい、もっと感じててもいいんだよ」
「あっ、すごいわ。ああ、そんなふうに胸を触られると感じるのよ」
もうすっかり涼子になりきっていました。そして、彼は身体の位置をずらして、涼子の下半身に刺激を始めていたのです。
「ああ、だめよ」
彼は、タックしていた涼子の秘密部分を留めていたテープをはがしたのです。ハート型のバタフライを突き上げるように、飛び出した涼子のものを、彼は愛撫するのです。
「もうだめ。そんなにすると、あ~、だめになりそう。」
「だめって、そう、それなら、やめるよ。やめてもいいのかい」
「ああーっ、やめないで」
「やっぱり、やめようか」
「続けて、お願い。いいっ、いいわ、そう、そこっ。」
彼は涼子の性感帯をくまなく刺激して、バタフライを身につけさせた涼子が恥ずかしがるのを楽しむように、コンドームを涼子のエレクトした部分にかぶせて、さらに激しく指を動かして、白濁をしぶかせていました。
そのあとも夜が明けるまで、涼子は激しく彼とのプレイの中で、女を演じつづけて何度も達していたのです。最後には、ハイヒールを履いた涼子の足を高く上げさせて、正常位で涼子を貫き激しく腰を動かすのでした。
「タックをしてから、穿いてごらん」
タックというのは、男性器を体内に納めるように見えなくしてしまうことなんです。ベビードールを着て、ベッドに横になると彼の愛撫が始まりました。
いつもは下半身のものをすぐに触るのに、その夜は乳首周辺をざらざらした舌で嘗め回し、乳首を指でつまみ、手のひらで乳房をつかむように揉みしだクのです。
ゴールドの12センチのハイヒールを履いた涼子の足は、微妙な刺激で屈伸を繰り返し、ある時はつま先を伸ばしきって、ある時は膝を曲げて快感の波にあわせるように妖しくうごめくのでした。

「ああー、もう感じすぎるの」
「そうかい、もっと感じててもいいんだよ」
「あっ、すごいわ。ああ、そんなふうに胸を触られると感じるのよ」
もうすっかり涼子になりきっていました。そして、彼は身体の位置をずらして、涼子の下半身に刺激を始めていたのです。
「ああ、だめよ」
彼は、タックしていた涼子の秘密部分を留めていたテープをはがしたのです。ハート型のバタフライを突き上げるように、飛び出した涼子のものを、彼は愛撫するのです。
「もうだめ。そんなにすると、あ~、だめになりそう。」
「だめって、そう、それなら、やめるよ。やめてもいいのかい」
「ああーっ、やめないで」
「やっぱり、やめようか」
「続けて、お願い。いいっ、いいわ、そう、そこっ。」
彼は涼子の性感帯をくまなく刺激して、バタフライを身につけさせた涼子が恥ずかしがるのを楽しむように、コンドームを涼子のエレクトした部分にかぶせて、さらに激しく指を動かして、白濁をしぶかせていました。
そのあとも夜が明けるまで、涼子は激しく彼とのプレイの中で、女を演じつづけて何度も達していたのです。最後には、ハイヒールを履いた涼子の足を高く上げさせて、正常位で涼子を貫き激しく腰を動かすのでした。
ゴールドの12センチのハイヒールを入れてダンボールのふたを閉じ終わると、タンスの引き出しを開けて、シルクのバタフライやプレイに使用したエナメルの下着を取り出しました。
このエナメルの下着は、ふだん身につけるものではなく、あくまであの時のものなのです。

これをプレゼントしてくれたのは44歳の男性です。彼の奥さんの3回忌の粗供養の品物選びに付き合って欲しいと頼まれていました。奥さんが亡くなって、2年過ぎていました。
彼と待ち合わせたのは、午後2時半ぐらい。お買い物は順調に終わって、輸入品を扱うお店に入ったのです。そこで彼が、いろんな下着の中から、エナメルの黒い下着を買ってくれたのです。その日、ホテルで彼と抱き合って彼の求めるままに何度か逝かされました。彼との時間が過ぎて、自宅に帰ったのは、日が暮れかけた夕方でした。
奥さんの法事が過ぎてから、お誘いがありホテルの部屋では、彼から支度をするように求められました。午後7時の時刻を知らせる時計が鳴るころ、セミダブルのベッドがある寝室には悩ましいランジェリー姿の涼子がいます。
バストからウェストまで、黒いブラ、ショーツ、ガーター、太ももから脚には黒のガーターストッキング、身体を隠すと言うよりは、それは身体をより悩ましく見せるのでした。エアコンをかけておいたので、室内は十分に暖かくなっていて、念のためベッドサイドにはローションも置いています。
だって、後ろに挿入されるときはローションが必要。
足音が近づいてきて、部屋のドアが開きました。
「涼子、もう準備はいいのかい」
ドアを閉めて、彼が上着を脱ぎ棄てて、ブリーフだけになって、ベッドに入ってきました。
「僕を楽しませておくれ」
そう言いながら、ショーツというか、パンティーの裾の方から手を差し入れてきます。太ももを触りながら、パンティーの上から秘密のふくらみの部分に触れてきます。
それから涼子の体を抱きしめると、ディープキス、あまりにも強く抱きしめられて息がしにくいほど、でもしばらくすると胸の部分をはだけさせて、ブラの部分をずらせて、乳首のまわりを唇で刺激してくるの。
「ああっ、ああー」
「かんじてるのかい、敏感だね」
「きょうは、排卵日が近いのかも」
「じゃあ、赤ちゃんができる危険性が高いんだね」
「赤ちゃんができる可能性、といってね」
二人で冗談を言い合って、その後、彼は右の乳房から、今度は左の乳房に唇を這わせる。
「はぁー、ああっ」
「きょうは楽しみだね、こんなに感じやすいんだね」
「ああっ、そんなに触ると当たりすぎ」
彼の手がパンティーのサイドから、ペニクリちゃんに触れている。身体に触れている彼の指先が、膨らみ始めた涼子のあの部分に、強くあたりすぎて、のけぞってしまう。
いつもなら足の指先まで舐めつくし、これでもかというくらい焦らせながら、最後にパンティーを脱がせ刺激して、涼子のあの部分が膨らみきって、先端から蜜があふれ出すと、オーラルな刺激が与えられる。
でも今日は焦らすことなく、涼子の一番感じる部分、膨らみきった部分に微妙に動く彼の舌先が、快感を与え始めている。
「アアッ、いいわ、いい」
「もう、いかせてあげるよ」
「アアーッ、アア、アッ」
涼子はもうすぐ訪れる、快感の頂上を迎えることに集中して、足をぴんと伸ばし、下半身にある彼の頭部を股に挟みこんでいた。
「逝っちゃうわ、いっちゃう、アアッ」
「ほら、もっと、ほら」
「アアーッ、アッ、イクー」
「・・・・」
「イイ、イッ、ア、アア」
もうすべての感覚がもうろうとして、激しい快感の高まりの中で、涼子は息を荒くしていた。ベッドサイドで、彼がローションをぬっている、涼子の先端から透明な蜜もあふれるほど出ているのに、この蜜を塗るだけでも挿入は可能なのに。

ベッドに来た彼が涼子の後ろから足の間に入り、ぐいと突き上げてくる、するりと奥深くまで彼のものが入ってきた。彼の挿入の摩擦を感じることなく、彼を飲み込み、涼子も腰を合わせるように動かしていた。
「あたっているわ、ああっ、あたってるの」
「かんじるかい、今日はゴムなしで入ってるよ」
「こんなに奥まで、あたっていると、できちゃうかも」
「怖いのかい、妊娠が」
「妊娠したら、どうするの」
「俺と結婚すればいいさ」
「アアッ、いいわ、いい」
「もう、いかせてあげるよ」
「アアーッ、アア、アッ」
「逝っちゃうわ、いっちゃう、アアッ」
「ほら、もっと、ほら」
「アアーッ、アッ、イクー」
「そろそろ、俺もだ・・・・」
「いいわ、あっ、んッ」
「もう、いい、いくよっ」
「いいわ、いって、いってね、アッ、ア」
彼が涼子の身体の奥で、精液をほとばしらせていくのがわかった。重なり合ったまま、余韻を楽しんでいた。その時のことを懐かしく思い出していた。
「じゃ、今からは、下着やランジェリーを箱に詰めようかしら」
バタフライは、プレイ用下着と一緒にして箱に入れました。一つ一つの品物に、女装した時の想い出があって、手に取るたびにそのことが新鮮に思い出されるのです。
【第四章 女装を絶つために】
後部座席を倒して、荷物スペースを広くして女装用品の詰まった箱を載せて、涼子は愛車を走らせていた。高速道路を30分ほどでおりると、さらに続くアスファルトの道路がしだいに山道になってくる。
最後だと思い、女装してハイヒールを履いて、ペダルを踏んでいた。あまり険しいと靴をはきかえようと思っているうちに、くねくねとカーブが続き、しばらくすると、のどかな田舎の風景が続いた。

「もう元には戻らないから」
そう誓いながら涼子は今、亮二(りょうじ)という男性の自分に戻り人生をやり直すため、女装を断絶するための修業道場に向かっている。
カーナビが料理旅館の近くに来ていることを示していた、ここで道を曲がるとそこが修業道場の本部。道は狭くなり木々が、日差しをさえぎり薄暗い。そのまま道なりに進むと大きな石碑があり、道場のある宗教施設に着いた。

車から降りると、広い境内を歩き事務所に着くと声をかけた。
「こんにちは、本日10時のお約束の佐藤ですが」
「はい、新規に入門される方ですね、お待ちしていました」
「荷物はどこに収めたらいいでしょうか」
「荷物はそのままで、まず本殿にお入りください」
薄暗い廊下を案内されながら、本殿に入った。大広間に仏像が安置されていて、信者らしき人が読経していた。その大広間を通り過ぎて、20畳ぐらいの応接室に案内された。
「こちらにて、少々お待ちを。教務主任が参ります」
ソファーに腰をかけていると、プロレスラーのような体格の大きな女性が来た。数珠を手にかけて、黒い袈裟衣、頭髪は長く、うっすらと化粧もしていた。
「あなたが佐藤さん、これからはきびしい日課に従って生活していただきます」
「あなたの目的は、精神修養でしたね、で、どうしたいのですか」
「申込書にも書きましたが、男らしく生きたいのです」
「男らしくって、まるで女の人のようね。」
「だから、ここに来たのです」
「あなたは、女装しているのに、なぜ男らしく生きたいの」
「それが、言いにくいことなんですが、僕は・・」
「佐藤さん、あなたは女装するのが好きなのね。それをやめたいと思ったわけ?」
「はい。このままでは性転換まで進みそうで、だめだと思ったんです」
「女になりたい、身体まで女性化してみたいと思うようになったんだ」
「そうなんです、女装して男性に愛されたいとか、性転換したいとか」
「ホモじゃないわけね、心は女性になってしまうわけね」
「このままだと、男として生きていくことができなくなるようで」
「家族は、あなたが女装することを知っているの?」
「今は一人暮らしだし、そのことは家族にも秘密です」
「今から、新人は2週間、外出禁止、携帯や車も使えなくなります」
教務主任は、道場での生活について説明の後、配属される宿坊を案内してくれた。白い大型のベンツに先導され、少し山を降り、明るい日差しのふりそそぐ、農村地帯の端にあるお寺の前で止まった。
「ここは400年続いている、農耕の祈祷専門のお寺です。地元の人には熱心な方も多いので、礼儀正しく、西川導師の指示通りにしなさい」
西川導師の奥さんと言う人が、迎えてくれた。これから寝泊りする、四畳半ほどの部屋に案内された。
「こんにちは、佐藤さんですね、西川の家内の佳代子です」
「はい、佐藤です、これからお世話になります」
あいさつが済むと、浴室で化粧を落として、あらかじめ用意された修業衣に着替えた。足袋を履き、草履を履くと再び道場本部に向かうベンツに載せられた。道場の手前にある料理旅館で降ろされた。
旅館に入ると、教務主任に向かって、旅館の従業員があいさつをした。
「女将さん、お帰りなさい」
「女将から皆に伝えておきます、今日から来てくれる佐藤君です」
「皆さんこんにちは、佐藤です、よろしくお願いします」
「佐藤君は、道場での朝のお勤めが終わると、客室の布団あげ、清掃などをしてもらいます。お昼が終わると、また道場でお勤めです。夜も寝具の係りをしてもらいます」
その日からすぐに道場、料理旅館、宿坊のお寺で過ごす生活が始まった。朝は5時起き、これが最初はきつかった。それも慣れてくると、めざまし時計に頼らなくても起きれるようになった。
祈祷寺で、仏様に新しいお水をお供えすると、門前から本堂までを掃除して、次には西川導師というか和尚の読経が始まるのだった。あっさりした食事が済むと、送迎用のマイクロバスが来て、料理旅館で降りるものと道場本殿組に分かれた。
旅館の客室の清掃が終わると、早めの昼食をとり、道場本殿に向かうのだった。ただし、修業者は男性ばかりではなく、女性もいることに驚いた。
本殿では、男女混合のまま、精神講話、教義講読、奉仕行動、精神鍛錬、写経など決められたカリキュラムで午前、午後を過ごすことになった。
次第に、話をする程度の自由時間もあって、顔見知りになるのは早かった。由紀さんという女性は30過ぎだけど、夫からの暴力から逃げ出してきたと言う。離婚して、親権者となった彼女は子どもを施設に預けているが、夫にも居場所を明かしてはいない。
「ここでの生活費は、旅館とかの従業員として支払われている給料でまかなっているみたいよ」
「ふーん、そうなんですか。だからあまり費用はかからないのですね」
「でもね、一部屋朝夕の布団しきや、掃除で800円、受け持ち5部屋で4000円というところ。月に12万ぐらいで、半分は修行の費用で差し引かれるの」
「そうなんですか、由紀さんはよく知っているんですね」
「旅館に勤めたことがあるから、だから、もう少し小遣いをくれてもいいのにね」
「修業できて、費用が無料ならそれもいいじゃないですか」
「佐藤さんは、お人よしね。でもなぜここに来たの、多重債務かなんかやばいこと?」
「そうじゃないんです、今までのままでいると、だめになると思ったんです」
「精神的な悩みって言うやつね、恋人はいなかったの」
「恋というか、恋人以前の問題なんです」
「なんか難しいのね」
由紀さんとのやり取りの後、コースが違うためか出会うことも少なくなった。ただ、私達の修業にも、性的な悩みを持つものが少なからずいて、邪念を祓うという理由で、道場の裏山にある滝にうたれる「ご修法」なるものがほぼ毎日繰り返された。
冷たい水しぶきに入ると身体は凍りつきそうなほど、吐く息も白く、10分ほどの間「般若心経」を繰りかえしながら口ずさみ、中には倒れそうになるもの、精神が高揚して身体が震えだすものもいた。

しかし、水から上がり滝つぼを離れ、道場の大浴場で温まり、修業衣に着替えて座禅を組む頃には、心身とも爽やかにとても落ち着いたすっきりした気分になるのだった。
修業1ヶ月が無事終わろうとしているころ、「女装」から離れて生活する毎日に、自分でも不思議なくらい満足していた。そして新たな修業が開始された、そのことが思わぬ結果を招いてしまうことに、まだ気づいてはいなかった。
【男と女になって】
いつしか女装をしなくても、過ごせるようになって2ヶ月目に入っていた。今までの生活の中では考えられないぐらい、女装から気持ちは遠ざかっていた。同じことの繰り返しで、毎日が退屈と言えば退屈だけど、手を抜けば叱責の声が飛ぶし、丁寧にやればきちんと評価された。
そして道場での修業の中身に「職業スキルアップ」というものが組み込まれた。社会に帰っていく時に、何のスキルもないものは結局もとの生活に戻ってしまう、そのために「運転コース」「医療事務会計コース」「パソコンコース」「工事・溶接コース」のようなものがあった。
フォークリフトや自動車の2種免許を目指すもの、CAD・プログラミングなどを学ぶものがあり、私は、「カウンセラーコース」を選んだ。
「もうすぐ1時だわ、早くしなくちゃ」
「やあ久しぶり、これからですね」
そんな言葉をかけた相手は由紀さんだった、彼女もカウンセラーコース。一緒に指定された第6修法室に向かった。
講師は、なんと教務主任、あのプロレスラーのような体格の女性だった。これからカウンセラーコースとして、4時間15回の内容で学び、協会指定の認定試験を受けると説明があった。僕と由紀さんのほかにも6人ばかりのメンバーがいた。
僕はこれまでに、産業カウンセラーの資格を取得していたので復習程度のつもりでいた。しかし、初回から理論はわずかで、二人一組になって設定された課題に沿って、交互にクライエントと相談者になってロールプレイを続けるハードなものだった。
僕の相方は、どういうわけか由紀さんだった。幼い頃の恐怖体験や、家族との出来事、自分への不満、果たせなかった希望、気がかりなまま手をつけていない問題など、もう5回目ぐらいには何も新しいことがないぐらいいろんなことを話し、聞かされた。
どう相手を受容し、そして課題に対してどう自己決定するか、それを相手自身の気持ちで語らせる、もう由紀さんのことは家族のように何でも知っている、僕のことも由紀さんは知っている。S的な由紀さんと、ややM的な僕、女装のことも知られている。
教務主任から「総括訓練」の参加者が発表された、僕と由紀さんと、あと二人の男女だった。今後毎週水曜日の夜に実施するという以外には、何も説明はなかった。
その後、文書が配布されて水曜日には早めに入浴して、身体を清めておくこと。午後9時半に料理旅館の指定された部屋に入ること。あとで知ったが、女性には、「9時少し前に部屋に入り、所定の衣装に着替えること」と書かれていた。
5月も終わりになると、昼間は相当暑くなっていて、汗をかいていた。いつもよりも丁寧に身体を洗った。風呂から上がると、自然な風が心地よかった。今は使用を許されているマイカーに乗った、エンジンの調子もいいし、料理旅館にはすぐに着いた。
指定された部屋に向かう途中で、女将と出合った。
「佐藤君、今夜は由紀さんとじっくり語り合ってね」
何か訳ありの様子で、声をかけられた。指定された客間には、寝具が敷かれていた。由紀さんは、白いネグリジェを着ていた。そして、女将の声がひびいた。
「あなたたち二人は、男として、また女としてまだまだ正常な状態ではないみたい」
「え、どういうことですか」由紀が聞いた。
「今夜は、二人とも大人の男女の営みを持って欲しいの」

「由紀さんは、男にこりごりと言うことで、レズに走っていたわね」
「はい、そうです」
「佐藤君は女装からはじまって、男性に求められる異常な愛を求めるようになったわ」
「それをやめたいと言う気持ちも、二人とも一緒ね」
「それはそうですけど、・・」
「ことばでわかっていても、実際はどうか、お互いに今夜確かめて欲しいの」
しばらく沈黙していたが、由紀さんが決意したかのように言い切った。
「佐藤君のことが好きだからやってみます」
それで決まった。
「あすはゆっくりでもいいから、しっかり報告してね」
女将の指示通りに、その夜は夢中で由紀さんと、初めてのセックスをした。女性とのセックスが初めてではなかったけど、かなり緊張してしまった。
ネグリジェの前をはだけると、由紀さんのバストは、ふくよかで張りがあり、乳首もつんと上を向いていた。そのバストにしゃぶりつき、舌を絡め両手で乳房を揉みながら、乳首をつまんでみたり、少しかんでみたりした。
さらに下半身に手を伸ばし、下着の脇から指を入れた。あの部分はすでに濡れていて、指で奥の部分を刺激すると、由紀さんは声を上げていた。お互いに身体をずらし、僕の目の前には由紀さんの下半身が、由紀さんの目の前には僕の男性自身があった。
お互いに快感をむさぼるように、久しぶりのセックスを楽しみかけていた。由紀さんはクリトリスへの集中した僕の口唇愛撫で、次第にのぼりつめていった。
「佐藤くん、ああ、かんじる、すごくいいわ」
「由紀さん、このままでいいですか?」
「オネガイ、続けて、もうすぐ、イクワ」
「逝って、いってください」
「アアツ、もう、イク、イクワ」
下半身をぐっと伸ばしたあと、股間の間にある、僕の顔を挟み込むようにした。僕も窒息しないように、あの部分から顔を離した。由紀さんは目の前で喘いでいた。
「早く入って」
それが由紀さんの合図だった。僕は由紀さんの上にかぶさり、由紀さんの太ももの間に入り、硬直したものを突き立てるはずだった。
「まだなの」
「ええ、そうなんです」
「触ってもいい、」
「ええ、でもなんか硬くならないんです」
由紀さんが、お口を使いしゃぶってくれたりしたが、勃起しなかった。電気をつけて、由紀さんの身につけているネグリジェが、目に飛び込んできた。さらに由紀さんの足元に、脱いだばかりのレースのショーツがあった。
「由紀さん、僕がこれを穿いてみてもいいですか」
すぐにショーツを穿き、ナイトガウンともいえる女性用のすべすべしたネグリジェを身につけたとき、勃起していた。ショーツの脇から僕の男性自身を出して、由紀さんのなかに侵入した。先ほどとは違って硬く、深く由紀さんを貫いた。
「ああー、いいわ、佐藤君すごく感じるわ」
「は、はいっ」
「由紀のって、どう?」
「とってもいいです、もうすぐ、いきそうです」
僕は、コンドームなしで由紀さんの中に、勢いよく精液を噴出した。由紀さんは、僕の下着姿にあきれながらも、拒否はしなかった。

「昔、女装した男性を鞭でたたいたり、ハイヒールで踏んだりしたことがあったわ」
「そうなんですか」
「でも、あなたは、女装したほうがいいみたいね」
「これだから、僕は、やっぱりだめなのかなあ」
「昼間の佐藤君は、男らしくて、さっぱりしているわよ」
「由紀さん、僕は女装していることが、好きなのかもしれません」
「佐藤君はお化粧すると、結構可愛くなれそうだから」
そのあとも、少しだけ話して眠りについた。
《つづく》 女装をやめようとした女装子の話《第五章》
【目次】女装をやめようとした女装子の話
【第一章】《決意》《女になりたい》【第二章】《お別れのパーティー》
【第三章】《女装用品とのお別れ》【第四章】《女装を絶つために》《男と女になって》
【第五章】《涼子の夢》《自分らしく生きるために》
【総合目次】へ
ホームページにもどる
コメント
コメント一覧 (2)
女装をやめるお話だと思って、読んでいただいたのですね。
女装をやめると言うことで、いろんな区切りや、けじめを付けたいとかんがえて男性とのお別れの場面もありましたね。
結果は、どんなことになっていくか、第五章まで掲載しましたので、続けてお読みください。
ピンクのバタフライ、こんなのを穿いているとすぐに、あそこをおしゃぶりされてしまいそうです。最後に、女装がやめられるのか楽しみです。