女装をやめようとした女装子の話《第三章》
【目次】女装をやめようとした女装子の話
【第一章】《決意》《女になりたい》【第二章】《お別れのパーティー》
【第三章】《女装用品とのお別れ》【第四章】《女装を絶つために》《男と女になって》
【第五章】《涼子の夢》《自分らしく生きるために》
【第五章 涼子の夢】
毎週水曜日、本来の性に従ってセックスするという由紀さんとの総括訓練で、僕は由紀さんのパンティーを借りて、ようやく由紀さんの中に入ることができた。
由紀さんも、女性の下着を身につけた僕とレズを楽しむように絡み合い、最後は僕のものを受け入れたままで、由紀さんは絶頂に達するようになり、最後はお腹に射精するようにしていたが、僕は我慢できずに由紀さんの中で逝ってしまうことがあった。
そんな時でも、僕は由紀さんのように女性として男性に抱かれたいと思うのでした。
修業を始めてからずっと元気だったのが、二日ほど前から身体がふらふらして昨夜は寒気がして起き上がることもできなかった。
「佐藤君、お加減はいかが?」
「まだ少し熱があるようで」
「そうね、今日も大事をとって、道場でのお勤めはお休みにしてもらうわね」
「はい、すみません」
西川導師の奥さんが、枕元に朝の食事として、あっさりしたおかゆに佃煮、梅干、だし巻き玉子、味噌汁を持ってきてくれた。食べられるものだけを口にして、薬を飲んで再び眠りに付いた。
どれぐらい眠ったのだろうか、僕は汗びっしょりで布団に横たわっていた。布団から起き上がると身体は汗でねっとりしていた。浴室に入りシャワーを浴びた、身体のふらつきもなかった。シャンプーで髪を洗いながし、トリートメントでさっと洗髪を終えた。
バスタオルを身体に巻きつけて浴室から出た、いつもは閉じている隣の部屋が開いていた。ひんやりした部屋の中には、床の間や段違いの棚があり、その部屋の隅には女性用のカラフルな下着が詰まった箱が置かれていた。それは、見覚えのあるものだった。
まず箱の中から取り出したのは、あまり身につけるチャンスがなかった、薄い透けるようなレースの花柄の純白のピスチェ(ロングブラジャー)。

ショーツはお揃いのもの、下半身にぴったりフィットしている。というか、少しもっこりしているがナイロン製で、お気に入りだったもの。ブラのカップは控えめだが、女性ホルモンで少し膨らんだ胸をカップに収め、、胸をきゅっと締め付けるブラジャーの感触がとても気持ちいい。
箱の中から、太ももまでのガーターストッキングを取り出して、いつものようにつま先から爪を引っ掛けたりしないように、太ももまで引き上げて、もう片方も同じように穿いてしまうのでした。
「やっぱりガーターで吊った方が、いいかもね」
ロングブラジャーから吊り下がったガーター部分に、ストッキングをそれぞれの留め具に固定した。
ここまでのつもりだったのが、浴室にある鏡を見たくなってミラーに写る自分の姿を見ました。身体のライン、可愛い真っ白な下着で装い、悩ましいストッキング、もうここで止めることができなくなってしまいました。
ウイッグに化粧品を取り出して、化粧水、乳液、ファンデーション、マスカラ、アイシャドー、口紅、グロス、いつものお気に入りの香水、すべてがそろうと決心したように自分の顔をメイクする作業を始めていました。
浴室のミラーの横の窓からは、さわやかな風が入ってきました。メイクに続いて、最後はウイッグをいつものように位置合わせをして、少しブラッシングすると終わりです。
ミラーの中には涼子がいました。居たというよりも、涼子になりたかったのです。鏡に映る涼子は微笑んでいました。

「涼子、あなたなの」
「そう、涼子よ。貴女が涼子を捨てようとしたから悲しかったわ」
「ごめんなさい、涼子のこと、実は居ない方がいいかと思ったの」
「ひどい、そんなに涼子を嫌い」
「ううん、よくわかったの、涼子の存在が大切だってことが」
「じゃあ、これからは、もう二度と涼子から離れない?」
「分かったの、本当は・・・涼子になりきって暮らしたいの」
「じゃ、いつも涼子でいてくれるの?」
「そうしたいけど、ある方と相談してみるから」
「今はわからない?でも、きっと涼子でいられるわね」
鏡の中にいる涼子に手招きをされた、涼子の手を握ると身体がフワーッと浮くように鏡の中に吸い込まれてしまった。やわらかなベッドの上には、涼子が二人いた。
「涼子、キスしてもいい」
「あなたの好きなようにして」
「涼子、もう待てないよ」
「あわてないで、涼子はどこにも行かないわ」
ベッドの上にいた二人の涼子は、いつの間にか男性と女性になっていた。抱かれているのは涼子、もう一人、涼子を抱きしめているのは高橋だった。
僕は涼子になっていて、もう一人が息を荒くしながら高橋になって、涼子の唇に顔を近づけてきた。彼の手が涼子の身体を抱きしめている、少し体重を乗せているぶん彼の重さを感じていた。
二人の唇が互いを求め合い、涼子は彼の口の中に舌を入れた。しばらくして高橋の舌が差し込まれ、涼子の舌と絡み合い興奮は高まっていく。
涼子は白い肌をさらに真っ白な下着で装い、まるで花嫁のブライダルインナーをつけているようだった。高橋は、涼子の胸、乳房をブラの上から揉み、首筋から舌を這わせてくる。ジーンとしびれるような快感で、身体はふわっと浮いたようでした。
高橋の手が、涼子の肩のストラップをはずすと、乳房が見えた。さらに、高橋は、涼子の身につけているものを脱がせると、涼子を抱き寄せた。上半身が露わになり、涼子の乳首があらわになった。

しっとりとした高橋の舌が、右の乳首、その周辺、さらに左の乳首へと刺激を続けていた。女性ホルモンで、少しふっくらした胸を刺激されると感じてしまう。
「乳首が、尖ってきたよ」
「あなたが、刺激するからよ」
「あっ、そんな風にされると、」
「気持ちいいんだろ、ほら、乳首が勃起してるよ」
すでに純白のピスチェ(ロングブラジャー)を脱がされて、白いパンティーだけ。さらに、高橋はパンティーも取り去ると、彼の手は涼子の下腹部に触れていた。

「下の方も、もう。固くなっているね」
「ああっ、感じちゃう、あっ」
もう声を出して甘える涼子に、高橋は満足している様子。高橋は涼子の下半身に、身体をずらして、ピンクの硬直した部分への刺激をしていた。
「アアー、イイワ、続けて」
「いいのか、涼子のアソコは爆発しそうだよ」
「ああっ、ダメッ、そこまでにして」
高橋の下半身に手をやると硬直したものがあった。高橋のものはもう硬直状態で先端からは、透明な液があふれてしずくが垂れていた。涼子は、今度は高橋のその部分を口に含むのだった。
口にいっぱいの大きな彼の分身、口をすぼめ先端部分を舌で刺激しながら、さらに深くのどの奥に達するぐらい飲み込んだりしていると、高橋は時おり、よがり声を上げていた。
涼子は、同性だから分かる高橋が感じやすい、その部分への刺激をなおも続けた。高橋は勢いよく精をほとばしらせた。
高橋が逝ったあと、ウエットティシューで始末をした。その時、涼子は、自分の胯間がむき出しになることが恥ずかしかった。胯間を隠すために下着を入れたポーチから、バタフライを取り出し身につけた。
ベッドに戻ると、高橋に強く抱きしめられた。そして涼子の上に覆いかぶさり、唇を重ねながら何かをささやいた。
「えっ、何?」
「・・・・」再び唇を重ね、彼はささやいた。
「ねぇ、よく聞こえなかったの、何?」
「僕の嫁さんに、なってくれないか」
「そんな、無理だわ」
「涼子が、嫌でなければ、僕は君と暮らしたい」
「こんな女装子、私でもいいの?」
「もちろんさ、君が望むなら、涼子が女性になる方法だってあるさ」
「そんなにまで、涼子のこと考えてくれていたの」
「そうさ、君を妻として迎えたい」
二人が熱く抱擁しあいながら、官能のおもむくままに一人は男として、涼子は女になりきって互いを求め合った。
涼子の硬直したものが隠されている、ピンクのハートの形のバタフライ。でも、それはすぐに高橋の手で脱がされる。涼子のバタフライの下に隠れていた部分、その先端から湧き出す密で濡れていた。

高橋がバタフライをずらすと、涼子自身は、高橋の目の前に露わになった。バタフライを穿いたままでも、挿入は可能だ。涼子は、高橋のものが挿入されるのを待った。
高橋の熱く固いもので貫かれた、彼が腰を動かすにつれて、涼子の熱くなった部分も同じように揺れていた。
涼子の胸の上に高橋の汗が滴り落ちてきた、自分の中で感じてくれている喜びと、ひたむきに涼子に突き進んでくる高橋が、とてもいとおしかった。
「涼子、涼子は僕のものだ」
「ええそうよ、あなたのものよ」
「すごく愛してるよ」
「ええ、私も愛してるわ、涼子でいいの」
「涼子がいいんだ」
「涼子、涼子、イクよ、涼子は僕のものだ」
「好きよ、あなた、ああっ、いい」
「ああっ、もうイキそうだ」
「いいわ、逝ってね」
「い、いくっ」
深く貫かれ、激しく腰を打ち付けて、高橋が逝ったとき、女として抱かれる悦びを感じていた。そして突き抜ける絶頂の快感と共に、意識を失っていた。
気が付くと布団の上で、横たわっていた。自分の身につけているものを確かめてみた。コットンのパジャマにブリーフといういつもの姿だった。洗面所で顔を洗ってみた、ファンデーションどころか口紅の痕もなかった。夢だったのか・・・。
【自分らしく生きるために】
その日の午後、私は、本山の勤めを終えて帰ってきた西川導師に相談した。
「もう、この修業をやめようと思うんです」
「途中であきらめる気持ちなのか、辛そうにしているほどでもなかったようだが」
「修業がつらいとか思ったことはありません」
「それでは、どうしてやめる気になったのだ」
「実は女装することをやめること、それがはじめの目標でした」
「もっと話してごらん」
「ほんとうに女装をやめるかどうか、相談したい人が居るのです」
「それで、・・・」
「その人に、もう一度本当の気持ちを話してみたいのです」
「佐藤君が、自分のことをどうするか、決めるのは自分しだいだ」
「はい」
「そこでひとつだけ、助言をさせてもらうよ」
「ここに居る、わしの家内も実は男だったのだよ」
「佳代子さんが?」

「そうなんだ、佳代子は元は男、しかし、誰も知らんのじゃ」
「そうだったのですか」
「修業の最後は、佳代子のもとでいろいろ試すつもりだったんだが」
「そんなことも考えられてたんですね」
「佳代子に話を聞くと、なかなか女装をやめるというのは難しいそうだ」
「男に生まれてきても、女に生まれてきても、人それぞれ歩む道も違えば、それぞれの望む幸せも違う。君の人生は、君自身が決めて歩むことが一番、ただし、迷ったらいつでも帰ってきなさい」
「ただし、わしに相談するよりも、佳代子のほうが相談しやすいかもしれないな」
次の日、プロレスラーのような教務主任に挨拶をして、道場での修業を終わりにした。
道場の受付の人に、気になっていたことを尋ねててみた。
「教務主任は、ほんとうに女性なんですか?」
「アレでも子ども3人を産んで、しっかり育てられたのですよ」
そんなやり取りもすぐに終えて、マイカーを走らせた。
窓からの風は少し初夏の風、日差しは十分強くなっていた。
この修業の2ヶ月間、黙って見守ってくれていた佳代子さん、疲れた身体を暖かいお風呂と夜食で迎えてくれたこと、洗濯物と一緒に、おやつの差し入れをしてくれたこと。
女装をやめるか、決心がつかない時も、黙って話を聞いてくれたこと、さらに迷っている自分の気持ちを整理するように、佳代子さん自身の性転換について話してくれたこと。本当に感謝しています。
ここでの生活で、ストレスから解放されて健康な生活を送ることができたこと、夜もぐっすり朝まで眠れるようになったこと、やっぱりここに来てよかった、そう思うのでした。
しばらくして、山道を抜け、舗装された2車線の道路から、速度を上げて高速道路に入った。

美しく化粧してハンドルを握っているのは、スカートを穿いている涼子、後部座席には、涼子で居るための道具を再び積み込んで、街に向かっていた。それが人生で、つらく苦しい選択になるかもしれないけれど、自分らしく生きるために。
亮介という青年は、休職から復帰することなく、会社を退職した。それと時期を合わせるかのように、高橋の経営する不動産の管理会社に、涼子という女性が事務員として採用された。
昼は会社で、夕方からは高橋の家の台所に立ち、家事だけでなく、高橋と寝食を共にしていたが、手術のために海外で入院生活を過ごすことになった。
しばらく入院生活やリハビリ治療が続いていたが、二か月後に彼女が日本に帰ってきた。
手術の傷跡の痛みやホルモンのバランスが乱れて、精神的に不安な状態を乗り越えて、亮二(涼子)は耐えていた。
半年が過ぎたころ、ツツジの咲く公園で、涼子は見違えるようになっていた。豊かなバスト、長い黒髪、健康的な肌の明るい女性になっていた。
医師から許可が出て、高橋と初めて結ばれたとき、感動で涙が出た。
その後、高橋に抱かれるたびに、女性の部分で微妙な感じだったのが、快感に変わり、もう後ろを使わずに愛し合えるようになった。戸籍上も、涼子は『女』に書き換えられた。
「結婚式をしよう」
高橋の提案で、花嫁になるために涼子が選んだのは ,海が見えるチャペル。明石海峡大橋が見えるそのホテルは、初めて高橋と出会った場所だった。
今日は、そこで、高橋家と佐藤家の結婚式が行われる。穏やかな青い海、雲一つない青空の下、ホテルの中にある真っ白なチャペル、新郎新婦の親族や友人の入場の後、神父さんが新郎新婦の入場を待っている。
新郎が入場し、神父さんと並び、チャペルの入り口を見つめている。二人の後ろの壁面全部が透明なガラス張り、その向こうには青い海が広がっていた。
ホテルの控室から、広い芝生の庭園を真っ白なウェディングドレスで、高橋の待つチャペルに向かって歩いていく涼子。

少し緊張しながらチャペルの中に入り、正面には高橋が待っているバージンロードを歩く。愛の誓いを新郎が読み上げ、涼子も誓いの言葉を宣誓した。指輪の交換、そして婚姻届には、妻、佐藤涼子、性別は女性と記入されていた。
チャペルの鐘が鳴り響き、白いチャペルの芝生の庭では、結婚式を終えたばかりの新郎新婦が祝福される光景が広がっていた。
子どものない涼子と高橋は、生後2歳の子どもを養子として迎えた。涼子によく似た子ども、その子を産んだ女性は「由紀」という。寺で修行した、あの時の交合によって由紀は妊娠していた。
寺での修行をやめて、あれから5年が経過していた。亮二は女装をやめた。というか、女装ではなくなった。今は涼子という女性であり、妻として、母として暮らしている。
『女装やめます』という亮二の気持ちは、どうなったのか。
『男として、女装することはできなくなった』
女性として生きることが、本当の涼子の願いだったのだろう。

今夜も、夫婦の営みのために準備する涼子だった。
《終わり》女装をやめようとした女装子の話
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