【目次】女装花嫁は”めぐみ”  赤い文字をクリックするとリンク先を読めます

《第1章》 思いがけない事故で、温泉旅行
《第2章》 届いた花嫁写真、花嫁になるために 
《第3章》 花開くとき、嫁ぐ日 

  

【あらすじ】
交通事故で男性としての機能を失った私は、秘かに女装していた。ブライダルフェアから届けられた写真は、花嫁姿の自分だった。女装することをカミングアウトした私は、思いがけない社長からの話しがあり、心を決めるのだった。

《性転換を考える》

 東京から帰りの新幹線、社長がグリーン車のチケットを購入してくれた。新横浜を出ると社長は眠っていた。 午後2時すぎの車窓からの景色は、青空の下、眺めはよかった。来るときは見えなかった富士山が、今日は見えるのを期待していた。

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 しばらくして、窓の外、雄大な富士山が見えていた。 関西にいると見ることのできない富士山、じっとその眺めを楽しんでいた。昨夜の話を思い出しながら、今後どう生きていくか、悩んでいたが、富士山を見ながら運命の流れのままに生きようと思った。

 社長の話では、
「自分の妻が起こした事故で、君を負傷させてしまった。下半身の傷、それも睾丸を失うことになった君に申し訳ない」

「東京の大学病院で、私の睾丸を君に移植できないかと、医師である友人に頼んでみた」

「しかし、検査の結果、私と君では不適応症状が出るので、移植は無理と言われた」

 自分の身体を提供して、私のために移植手術まで考えてくれた社長。 自分が考えもしなかった、社長の思いに驚いていた。

「社長、ご自身の身体を傷つけても、いいのですか?」

「僕には、もう子どもがいる、だからできることなら」
「こんなに元気になれたんです、結婚や子どもができるかなんて」
「君から普通に結婚して、子どもを育て、楽しく暮らせる人生を奪ってしまった」
「気にしないで下さい、私は大丈夫です」

 しばらく、黙ったまま社長を見つめていたが、結局、私は社長の心の負担を少しでも和らげるために、言い切ってしまった。

「私は、子どもを産むための結婚はしません。」
「君は、それでいいのか」

「ひとりで、生きていきます」
「ご両親も納得してくれるのか」
「なにより、僕は三男坊ですから、家を継ぐ必要もないのです」

 社長は、僕に頭を下げて、涙ぐんでいた。

「社長こそ、奥様を失って、一人になってしまったじゃないですか」
「そりゃあ、寂しいときもある」
「再婚されないのですか?」

「恵三くん、君を前にして、再婚など考えることは出来ない」

 富士山を見つめながら、僕はおかしなことを考えていた。 どうせ子どもが出来ない身体になってしまったのなら、今までは、隠してきた女装。学生時代から、ひそかに続けてきた。今でも、女装外出することもあった。
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 事故でこういう身体になったのを理由に、女装で生活してみたい、性転換して女性として暮らしてみようか、など車窓からの景色を見ながら考えていた。、。
今なら手続きの費用もある。隠れてこそこそ女装するよりも、生殖機能がない身体なら、戸籍上の性も変えることが出来ないだろうか。

 スマホで性別変更について調べてみた。その当時は、まだ6つの要件があった、性同一性障害の診断を受けねばならないのか。 関西で、診断できる病院を探してみた、通院可能な外来を見つけた。そこの予約を取って、受診してみよう。

 そんなことを考えているうちに、新幹線は新神戸に着いた。

《届いた花嫁写真》

 相変わらず、週に2回ほど出社して、データ入力やシステムの改良を手伝い、昼前には帰宅した。 日光で花嫁衣装を着て撮影したことも忘れて、部屋の中で女装を楽しんでいた。 ときおり女装クラブやプロのメイクで返信できる店にも行き、手術済みのニューハーフから性転換の話などを聞いたりしていた。

 時には、豊胸手術や女性ホルモンを試してみないかと勧められたが、シリコンのバストパッドを3種類ほど使い分けて楽しむ程度だった。 睾丸はなくなったが、それでも勃起することがあり、オナニーすると量は少ないが透明の液体が快感とともに染み出した。

 ピンポーンとチャイムが鳴り、ドアを開けると社長がいた。
「日光のホテルから、昨日届いたんだ、君宛のものだと思うから持ってきたよ」
「わざわざ、ありがとうございます」
「宛先が私の家になっていて、きっと、宿泊者名簿で、私の住所を書いていたからだと思うよ」

「ごめんね、何かと思って、写真を見せてもらったよ」
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 大きな封筒の中には、台紙に貼られた花嫁の写真が3枚入っていた。 一枚は前から、二枚目は後ろから、三枚目は撮影位置を変えたものだった。

「社長、あの日、ブライダルフェアが開催されていました」
「私が昼過ぎに着いたとき、大勢の人が居たね」

「くじを引いたら、それが当たり、花嫁衣装を着ることになって」
「男の君でも、花嫁衣装を着させてもらえたんだね」
「初めは、迷いましたが、これも体験かと思ったんです」
「そうか、その時の写真だったんだ」

「とても恥ずかしいです」
「大川君、まさか君が女装するなんて」

その時、リビングに室内干ししている、ブラやショーツを見られてしまった。

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「その女性の下着は、交際している彼女のものか?」
「いえ、違うんです」
「まさか、君が」

「すみません、僕が女装で使った物なんです」

しばらく沈黙が続いた。

「まずいことを聞いてしまったようだね」

「いえ、いいんです」

 社長は、送られてきた写真を見ながら、話し始めた。

「この写真、花嫁姿の君は美しい、君が女装すると、亡くなった妻の若い頃に似ているよ」
「・・・」
「学生で妻と結婚してね、式を挙げずに、友人を集めてパーティだけしたんだ」

「子どもから、パパとママの結婚式の写真は?と聞かれたことがあった」

「その時、妻は、愛さえあればいいのと返事していた。でも寂しそうだった」
「もし、君さえ良ければ、花嫁衣装を着て、私との写真を撮らせてくれないか?」

「写真だけですか?」

 私は、写真だけぐらいなら、そう思っていた。

「ごめん、君の気持ちもわからなくて、写真でなく花嫁として君を迎えたい」
「男なのに、女装している私で、いいんですか?」

「二人きりで暮らそう、息子が再婚してもいいと言ってくれている」
「息子はもう結婚して東京で暮している、君は、僕と暮らさないか」
「そんなことが許されるでしょうか?」

「実は、以前から君が、女装していることは知っていたんだよ」
「女装していることに、気づかれてたのですか?」

「最初は、ブライダルフェアで花嫁になった、君を見かけたんだ」
「君に気づかれないよう、花嫁が誰かを確かめて、会場を離れた」
「社長が支配人と話していた、あの時、気づいてたのですね」
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「それから、社宅の防犯カメラ、出掛ける君の姿が写っていたよ」
「男としての機能を失った君が、どう生きていくか、迷うのもおかしくない」

「・・・」

 私は黙っていた。

「花嫁になった君は、美しかったよ、一緒に暮らさないか」
「もし君が許してくれるなら、女性の姿で」

 社長の言葉に驚き、女になって暮らすことが出来るのなら、・・・そういう気持ちになっていた。

「ちょっと、待って下さい」
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 奥の部屋で社長に待ってもらい、私は着ていた服を脱ぎ、女装した。 スリップに、薄いレースのショーツ姿の私、うすく化粧し、口紅をつけ、ウイッグを頭に留めた。

《花嫁になるために》

 まだ明るい日差しをさえぎるように、遮光性のあるレースのカーテンを閉めた。 女装した私を見て、驚きの表情を見せている社長。

 社長には、花嫁衣装で一度は女装している所を見られている。けれども、悩ましい下着姿は、初めてなのでした。

「分ったよ、君が女装することは」
「私は、なぜだか女装すると、男でいるときよりも心が安らぐのです」
「社長、奥様の代わりに、わたしを抱いてください」
「そんな、・・・」
「いつか、こういう日が来ると、いえ、来て欲しかったんです」

 スマホで夏のBGMを選び、ワイヤレススピーカーから音楽を流した。 社宅は鉄筋だけど、隣室に"あの声”が漏れないよう気をつけたのです。

「これから、恵三でなく”めぐみ”と呼んでください」

 社長の座っているベッドに、二人並んだ。社長の前で、私は一人の女になり、熱い時間が流れた。 どれぐらい時間がたっていたのか、それとも、あっという間だったのか。 あの日、二人の思いはひとつになり、社長と私は、男と女になって結ばれた。

 オーラルな刺激にのけぞり、せつなくあえぐ私を抱き、最後には私の中で逝ってくれた社長が、とても愛おしかった。 そのあとも、女性のクリトリスを舐めるように、私の性器を口で絶頂に導いてくれた。

「恥ずかしいです」
「恥ずかしがることはない、これが私たちの営みだ」
「こんな異常なセックスでも、いいの?」
「夫婦のセックスに、異常なんてないさ、それがセックスだよ」


私を、何度も逝かせようとする社長

「待って、今度は私の中で、貴方が逝って、オネガイ」
「君ほど若くないから、今日はこれが最後だよ」
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 これまでにも数回、男性との経験もあった、でもそれは女装という遊びの中での行為だった。男性が逝ってしまうと終わりの、ラブホテルの一夜かぎりの関係でしかなかった。

 今は深く結ばれた、私たち二人の営み。ベッドで抱かれながら、彼が私の中に入ってきて、のぼりつめる前にお願いをしました。

 花嫁衣装を着るだけの記念写真でなく、入籍が出来ないまでも、親族の同意を得てから結婚式を挙げたい、”妻”として暮らしたいと私の思いを伝えたのです。

 それには、社長も同意してくれました。 彼にグラスを手渡した、冷たいミネラルウォーターを飲み干すと、ベッドに腰掛けている私の腰を抱いた。

「旦那様、いかがでしたか?」
「よかったよ、久しぶりに三度も」
「ありがとう、でも身体に負担になるといけないから二回でいいわ」

「君が二回でいいなら、そうさせてもらうよ」
「その代わりに、週に2回ぐらいして欲しいわ」
「結婚まできれいな関係でなくて、いいのか?」

「花嫁になる日まで、何もしないなんて、その方がおかしいわ」
「社宅に僕が来るのは目立つから、家に君が来てくれないか」
「毎日は、行かないわよ」

 そんな話をしながら、二人が結ばれた日の午後は、過ぎていった。社長は、夕暮れ前に会社に帰っていった。その日は、ずっと身体の中に太くて固いものが入っているような気がしていた。

《めぐみの嫁入り支度》

 あの日から、私は「恵三」ではなく、”めぐみ”と呼ばれるようになったのでです。 二人きりになると、女装して、社長の前では一人の女で過ごすことができました。

 さらに、水道、ガスや電気などの公共料金の使用者名を変えたり、郵便局に世帯員名に”めぐみ”を加えたのです。 それは何のためかというと、”めぐみ”という名前で暮らした実績を作り、改名に役立てるためです。

奥様が亡くなられて、2年が過ぎました。

「奥様の、三周忌が過ぎてからにしたい」
私から社長との結婚式は、そうして欲しいと頼んだのです。
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  二周忌の法要には、女装で私も参加したのです。法要の後、法事の会場であるお寺を親戚の方たちがつぎつぎとお帰りになりました。社員の多くは、マイクロバスで駅まで送迎されました。社長の息子さん夫婦と親族の車を見送ると、私は社長の車に乗りました。


「私のこと、誰か気づかなかったかしら?」
「誰も、気づいてないよ」

「黒い喪服の君は、ステキだ」
「そんなこと言って、奥様とのエッチを思い出していたの?」
「今は君と、したいな」

 車は、国道から高速道路に入り、10分ほどで市内のネオンサインもまばゆいホテルに入りました。

「今夜は、息子夫婦が泊るから、家では出来ないから、ここで」
「法事が終わったばかりなのに」
「ダメなのかい?」
「したいんでしょ?いいに決まっているわ」

 もう結婚式までの身体の準備は出来ていた、彼に乳房を愛撫されながら、それまでを振り返っていた。 一年前、結婚までには、することがいろいろとあり、まず体重を10キロ増やすことから始めました。

 なぜなら、痩せてぺたんこな胸を女性の乳房のように、豊胸したかったのです。女装クラブのママに相談して優秀な形成外科、美容整形の熟練した医師を紹介してもらったのです。 胸を豊かな乳房にしたいと診察の時、医師に伝えたのです。

「こんなに痩せた状態では、Bカップに出来るかどうか」
「Dカップに、出来ないのですか?」
「もう少し、胸の部分の皮膚に、余裕を持たせる必要がある」

「先生、どうすればいいのですか?」
「10キロは太りなさい。1ヶ月で1キロのペースで体重が増えるぐらいがいいから」
「あと10ヶ月、時間が必要なんですね」

「あまり筋肉が増えないように、炭水化物を多めに、ただし、アイスやドーナツ、ラーメンはダメだ。ブロッコリーやトマトなどの野菜を中心に、豚肉、鶏肉、牛乳、チーズ、ヨーグルト、などもしっかり食べなさい。塩分は控えめに」

「先生、それでは、花嫁衣装が着れなくなってしまいます」
「胸の部分の皮膚に余裕が出来たら、手術するから、希望する形が出来たら、今度はダイエットするんだよ」

 その数日後、社長に性転換したいと相談しました。 東京のある病院に、再び受信することになったのです。 前回の診断の結果を踏まえて、生殖機能は失われているから、造膣手術をして性転換することも出来なくはないと言うことでした。

 それと、性別適合手術のために”性同一性障害”の診断を受けておくように言われて、他科受診の紹介を受けたのです。病院内部の紹介と言うことで、以外に早く受診できたのです。 社長から、私の身体に負担のかかる手術を避けたい、造膣手術をしなくて済ませられないかとの提案があったのです。

 性転換手術後に、体調だけでなく精神まで不安定になった例を、社長は知っていたのです。 主治医とも相談の上で、性同一性障害の診断が降りてから、ある方法で手術することになったのです。

 花嫁になるために、髪の毛を伸ばしたり、体重を増やしたり、手術後はダイエットに励んだり、日に焼けないよう袖の長い服やカーディガンを着たり、スキンケアーなどかなりの時間を費やしました。
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 奥様の二周忌の法要を迎える頃には、豊胸手術も、下半身の手術も終わりました。 顔の少しの整形と声帯も、無事に手術を済ますことが出来たのです。

  声が高くなったことで、電話に出ても、もう私とはわからない社員たち。女性になった私は会社に行き、社長室にも出入りするようになりました。 社長室に向かう私の胸の膨らみに、男性社員の視線が向けられていて、社長との夜の営みで、それを話題にしていました。

「事務所に入るとき、Yくんは必ず私の胸を見ているの」
「Yだけでなく、F係長も君のおっぱいが好きなんだろう」

そういう会話も、二人にとってはムードを高める前技になるのでした。




   《つづく》 続きをお読みになる方は、
       
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