【目次】女装花嫁は”めぐみ”  赤い文字をクリックするとリンク先を読めます

《第1章》 思いがけない事故で、温泉旅行
《第2章》 届いた花嫁写真、花嫁になるために 
《第3章》 花開くとき、嫁ぐ日  


【あらすじ】社長と私は、男と女になって結ばれた。カミングアウトした私は、思わぬ社長の提案を受け入れた。社長と私は、実家を訪ねて二人が結婚することを伝えた。母は、驚くが、父の話に納得し、娘になったことを受け入れてくれた。

《花開くとき》
 裁判所からの通知が届きました。一通は、氏名変更、そしてもう一通は、性別変更です。通知を持って市役所に行きました。

 新しい戸籍が出来たのです、そこには父母の氏名欄、続柄は長女となっていました。名前も、”めぐみ”になったのです。前の奥様の名前を使うことで、便利なことがいろいろあったのです。

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 その夜、社長と二人でお祝いをしました。 そして、私たちは新しく購入したダブルベッドの上で、熱い抱擁を交わしたのです。

「今夜は、明るいままで、君が女になったことを確かめさせて欲しい」
「そ、そんな、恥ずかしい」

 そう言いながらも、私は彼に、女になったあの部分を見てもらいたかったのです。 大きくした乳房は、傷あとも脇の下にかすかに残る程度です。

 男の象徴だったものは、すぐには見えない。すべてを切除してしまわずに残してある。 睾丸を包んでいた袋の部分を工夫して、外観は女性器のように大陰唇を造り、その上部に小陰唇というか少しくぼみを造り、指で押し込むと陰茎が収まってしまう。

 彼に刺激され、少しだけ勃起してくると亀頭部分が顔を出す。 絶頂に達すると、睾丸はないのに、射精?のように透明の液が染み出してくる。 女性のように男性を迎え入れる膣はないので、その時はアナルでのセックスになる。

  通常の性転換手術のように、膣を拡張する器具を使い続ける必要もない。男としてのオルガスム、射精しての絶頂感も失うことなく、オナニーすら出来る。
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 セミの羽のように、薄く透けるスキャンティ、股の部分には穴が空いている。 脱がなくても、あの部分に触れることもできる。 社長の舌と口唇による刺激で、クリトリスのように亀頭が顔を出す。

 すこし勃起している程度で柔らかく、親指より大きい程度。 それでも、私は敏感に感じていた。

「アアッ、逝っちゃう、あなたのお口を汚してしまうわ」
「いいから、気にしなくても」

 トロリとしたたる透明な液が、股間を流れてゆく。 ローションを使わなくても、彼の堅くそそりたったものを受け入れる準備が出来るようになった。透明の蜜が菊の蕾みを濡らし、喘いでいる私に挿入してくる熱い肉棒、それが深く侵入しある部分にあたり続ける。

 逝ったばかりの私に、次々と快感が押し寄せる。 私に欲情してくれる社長、彼のもので貫かれる、今の私は女。 多少の痛みはあるが、それよりも、私の身体で感じて逝って欲しい。
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 挿入されて、彼のものを受け入れて、私はアソコを強く締め付ける。その分、彼の熱く硬いものをしっかりと感じてしまう。もう、彼も登りつめて絶頂を迎えようとしているのがわかる。
「もう、逝きそうだ」
「イッテ、イッテ、ああ、ステキよ」
「逝くっ、・・・」

 その時、彼の手がわたしのクリトリスに触れて、少し強めに当たり続けて、のけぞるように私も逝ってしまった。クリの亀頭部分の先端からは、透明の液体が噴きだし、激しく飛び散った。この射精とも言える快感に私は、満足するのです。

 私が逝ったことに気づいた社長は、満足して「良かったかい」と声をかけてくれるのです。もちろん、私も「あなたので、逝ってしまったわ」と返事するのです。


《実家の父母と》

 数日が過ぎて、私たちは叔母の葬儀の知らせを受けたのです。 叔母の死を知らせる母からの電話

「もしもし、恵三、 けいぞうなの? ・・・あなたは、だれ?」
「母さん、私、恵三よ」
「恵三の、彼女さんなの?」

 声帯の手術で、声が変わってしまった私が、わからない様子。 とにかく、めぐみと名乗り、『恵三さん』に伝えることにして、叔母の葬儀の日時と場所を教えてもらい、電話を切った。

 今から行っても、葬儀の開始時間には間に合わないけれど、葬儀の式場に向った。葬祭の場所は、実家の近くにあるお寺だった。

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 叔母の葬儀は始まったばかりだった、一般の人の中に参列して、お別れを告げた。喪服から訪問着に着替えて、夕方、社長と二人で実家に向かった。 久しぶりに帰った家は、昔のまま。 社長と二人で、父母の暮している家の中に入った。 玄関に出てきたのは、母だった。

「どちら様でしょうか?」
「お母さん、恵三です」
「えっ、恵三は私の息子ですが、男の子ですよ」

 驚きながらも、母は何かを感じ取った様子でした。 父は叔母の葬儀のお礼に、町内を廻っていた。玄関で、緊張した母の様子を見て、私は母にゆっくり事情を説明した。 私が恵三であること、性転換したこと、結婚することを伝えた。

 そこに、父が帰ってきた。

「そんな所に、立っとらんで、早う中に上がりなさい」

 社長と私は、父の後について仏間に入った。 仏壇の前で、線香を上げ、先祖の位牌に手を合わせた。それから、父と母に挨拶と、結婚の報告をした。
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「恵三、よく帰ってきた、事情は前に社長さんから聞いとるんじゃ」
「父さんは、知ってたの?」
「母さんに言うと、どんなに心配するか、それで教えんかったんじゃ」

「事故の後、社長さんが、恵三の病状の話をしてくださったんじゃ」
「病院で、社長さんと二人で談話室に行った時のこと?」
「そうじゃ、母さんは恵三の付き添いをしていたから」

「どんな話だったの?」
「社長さんが、このままでは恵三に子どもができん、恵三に睾丸を譲れるなら、移植手術をしたい」
「社長さん、そんなことまで気を使わんでも、恵三の命さえ無事なら、それがなによりじゃ」
「わしら夫婦は、これからは恵三の生きたいように、応援してやりたい」

 病院で、社長と父が話したとのこと。 最近まで、恵三の手術のことも、父は社長から連絡を受けていたが、母には話さなかった。

 結婚式が近づき、いつ母に伝えるか父は迷っていた。 おばの葬式で家に帰ってくるように、母から私に電話させたのだった。 母は泣いていた。父も声を詰まらせながら、話していた。

「隠していたことは、私が悪かった、恵三が望むようにさせてやりたかった」
「私だけが、知らんかったんやね」
「恵三が女になりたいと言ったとき、おまえは許せたか」
「そんなことは、私だけではできんけど、父さんが許すとは思えんかった」

「おまえは、一人ぐらいは女の子が欲しいと言ってたじゃろ」
「めぐみは、母さんに似ていて美人じゃ」
「本当に、きれいになって。
私は娘が出来てうれしい

「嫁にやりたくはないが、いつかは嫁に出さにゃあ」
「お父さんさえ良ければ、めぐみの願いを叶えてやりたい」

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 母は、私を”めぐみ”と呼び、私を抱き寄せてくれた。 瀬戸内の静かな海にも、春が訪れていた。 海沿いの家から、楽しく団欒の時を過ごす家族の話し声が、響いていた。

父母の明るい声、めぐみと社長の声も、和やかな春も暮れていった。 めぐみが”花嫁”になる日は、近い。


《嫁ぐ日》

 父母と3人で、式場のあるホテルで前日を過ごした。 お決まりの挨拶は、照れくさいという父だったが、めぐみは娘としてきちんと挨拶をしたいと母に頼み込んだ。

 夕食の後、披露宴で写す新郎新婦のスライドの試写会が行われたのです。通常は、二人の出生時の赤ちゃんの写真から始まるところですが、”学生時代”からの写真を使うということにして、作成を依頼していたのです。
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 めぐみの写真、それは学生時代からの女装写真で、済ますことが出来た。 それは、父母が初めて見る”息子”めぐみの写真だった。 試写会が終わり、父母は”めぐみ”を娘として嫁がせることを、しみじみと感じていた。

事故のせいでこうなった、というよりも”めぐみ”の方が先にあって、今に至ったこと。 女の子に生んであげれば良かったと、母はそう思った。

めぐみが望む生き方を、幸せになれるならと、喜んで見守りたいと父母は願った。父母の宿泊している部屋に、めぐみは入っていくのでした。

「お父さん、お母さん、今日までありがとうございました。 みゆきになった今、私は二人の愛情いっぱいの家から、嫁いでいきます。そして、これからは新しい家庭で、嫁として、妻として幸せな家庭を作ります。 お父さん、お母さん、私はお二人の子どもとして生まれて幸せでした。これからも娘として、親孝行したいと思います。 ありがとうございました。」

迎えに来た花婿になる、社長とともに次の日に備えて、別の部屋に向かうのでした。

 ホテルの衣装室の女性から、「明日は朝8時過ぎにお越しください。午前中の結婚式ですので、少しお早いですが」 通りすがりに声をかけられた。

 朝日が昇り、空が明るくなってきました。 ”めぐみ”は、短い眠りの繰り返しで、午前4時過ぎから目がさえて眠れなかったのです。 すでに朝食を済ませて、衣装室に向かうだけ。 ホテルの部屋の中で、今日、花嫁になる自分を鏡に映し出してみた。
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 もう初夏の6月、私はJUNEブライドになる。おとなしい黒のアンサンブルを身につけている これまでは女装だったのに、今はそれが日常になってしまった。

 女装を始めた頃を、思い出していた。 近くの美容室から、花嫁が花嫁専用車で、結婚式場に向かう姿を見たことがあった。 いつも見かける近所のお姉さんが、花嫁衣装で美しく輝いていた。

 自分も花嫁になってみたい、それは叶わぬ願いとその時は思っていた。日光のホテルで花嫁衣装を着せられたときも、まさかそれが実現するなど思いもしなかった。

花嫁は花婿よりも2時間以上も前に、準備の支度が始まる。 着ていた黒のアンサンブルを脱いで、下着だけになる。 すぐに白粉を首筋や顔に塗られて、化粧も大体は終わった。

肌襦袢を着せられて、着物の着付けの前に、トイレに行くように言われた。

「花嫁には、きつい1日になるわよ」
「汗になるから、水分は控えてね」

トイレから戻ると、化粧の最後の仕上げが行われた。 真っ赤な口紅を筆で塗られて、日本人形のような自分がそこにいた。
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「着物を着慣れていないと、きついかもしれないけど、辛抱してね」 そう言いながら、帯を締め上げ、たくさんの紐で、さらにきつく緩まぬように結ぶ。

「そろそろ、お式が始まりますから、綿帽子をかぶりましょうか?」

白無垢の花嫁衣装、さらに花嫁にかぶせられる綿帽子、緊張が高まる。 その時、「花婿さんですよ」そう言われても、すぐには振り向けない。

社長、いえ花婿が、わたしの手を取り、指輪をはめてくれたのです。
「今日は神前結婚式だけど、指輪の交換もあるので、念のため、君にはめる練習をしておきたかったんだ」

彼の手で指輪をはめられると、指の関節部分もするりと通すことが出来ました。

「練習はお済みですか、お熱い二人さんですこと、式場に行きますよ」

綿帽子をかぶせられた私は、係の女性に手を引かれて、親族の待つ式場に向かったのです。 花嫁の草履はかかとが少し高く、歩きなれていない草履で、式場までが遠く思えました。 父も母も、二人の兄たちが夫婦で参列してくれました。社長の親族は、息子夫婦、叔父、伯母が出席してくれたのです。

神前結婚式の祝詞を神主が読み上げ、私は”めぐみ姫”と祝詞の中で呼ばれていました。祝詞がおわると、巫女が二人、三三九度の杯を準備して、彼と私に手渡すのです。 盃に満たされた御神酒をいただき、彼と交互に盃を交わすのです。

その後で、キスのシーンはありませんが、指輪の交換があり、私は泣いてしまいました。 結婚式が親族だけの参加だったのに、披露宴では白無垢の花嫁衣装から、お色直しということで、赤い花嫁衣装に着替えたのです。
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 親族だけでなく、会社の専務や社員まで参加し、賑やかでした。 私が、仲間というか同僚だったのに、私だとも知らずインタビューされました。

「子どもは、何人欲しいですか?」
「・・・」

 黙っていると私の代わりに、社長が「二人でも三人でも、頑張ってみるか」

その声に、「きれいな若い花嫁だから、社長も頑張りがいがありそう」と盛り上がるのだった。

 社長の親族からも、同じような声がありました。子どもの産めない花嫁の私は、複雑な思いでした。 できるものなら、産んであげたい、そう思うのでした。

 インタビューで、「花婿とのなれそめは?」と聞かれたのです。
「旅行中、日光で知り合ったの、優しい人だったから」
「相性は、どうですか?夜の方も?」
「今は、最高です」

 そういうやりとりで、賑やかな宴会でした。 披露宴の途中で、写真撮影、二人の記念写真をいっぱい写したのです。 写真撮影が終わると、再び披露宴の席に戻りました。

司会者が、「花嫁のご両親による演奏です」という声で、会場は静かになりました。

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 中島みゆきの「糸」を、母が琴、父が尺八で演奏してくれたのです。 子どもの頃、母が弾く琴を、私も弾きたいと泣いた思い出があります。

「琴は、女の子が弾くものよ」
でも、母は、私に琴の爪を私の指にはめて、弾かせてくれたのです。

 結婚式にと、父母が練習してくれたこと、うれしくて涙が出ました。両親にも””めぐみ”を受け入れてもらい、花嫁衣装を着て、本当に幸せでした。


二人の結婚式は終わり、その夜から夫婦としての生活が始まりました。
 
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       《終わり》



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